はじめに

現在日本で流通される化学物質は数万種に及ぶと言われています。洗浄剤に使用される物質も多岐に亘り、その生産、使用及び廃棄によっては人の健康や生態系に影響を及ぼすことがあります。この影響の大きさは過去の公害問題や火災・爆発事故を見れば容易に推測されます。

産業洗浄においてはその事業活動の利益・利便を優先するが故に、環境・安全の優先度が下がることが見受けられます。我々は化学物質が大気、水、土壌等の環境媒体を通じ我々の日常生活に及ぼす影響や安全性をリスクとして捉え、総合的に低減させる必要があります。

化学物質に関わる環境、安全のリスクは未解明な部分も多く、何をどこまで対応するかは判断の分かれるところではありますが、産業洗浄を行う上では最低限、各種法令を遵守して従事すべきです。

産業洗浄に関わる主な法令と産業洗浄でよく使用される該当化学物質を下記に記載しております。洗浄剤を使用する現場における環境・安全を怠ると企業の存在を左右すると言っても過言ではありません。現在使用されている洗浄剤・溶剤から代替できる洗浄剤は無いか、というお問い合わせも増えております。お困りごとがありましたら、ぜひご相談下さい。

※文中の法令に関しては2022年2月現在の記載で、法令は改正されることがあります。

労働安全衛生法

労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律

特定化学物質障害予防規則(特化則)

「特定化学物質障害予防規則」は労働安全衛生法労働安全衛生法施行令の規定に基づき定められています。その目的は、下記の通り示されています。

「事業者は、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するため、使用する物質の毒性の確認、代替物の使用、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底その他必要な措置を講じ、もって、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、化学物質にばく露される労働者の人数並びに労働者がばく露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならない。」

🔔特定化学物質
1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン(塩化メチレン、メチレンクロライド)、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、エチルベンゼン、1,2-ジクロロプロパン、ナフタレンなど

有機溶剤中毒予防規則(有機則)

労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令の規定に基づき、並びに同法を実施するため、「有機溶剤による中毒の予防に必要な事項のうち、現行労働安全衛生規則に規定されていない事項及び規定されてはいるが更に具体的に規定する必要がある事項について、単独の規則を制定して規制」しています。

🔔第1種有機溶剤
1,2-ジクロルエチレン(1,2-ジクロロエチレン、2塩化アセチレン)、二硫化炭素
🔔第2種有機溶剤
アセトン、イソブチルアルコールイソプロピルアルコール、イソベンチルアルコール(イソアミルアルコール)、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、オルト-ジクロロベンゼン、キシレン、クレゾール、クロロベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ノルマル-ブチル、酢酸ノルマル-プロピル、酢酸ノルマル-ベンチル(酢酸ノルマル-アミル)、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,1,1-トリクロロエタン、トルエン、ノルマルヘキサン、1-ブタノール、2-ブタノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル-ノルマル-ブチルケトン
🔔第3種有機溶剤
ガソリン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む。)、石油エーテル 石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット及びミネラルターペンを含む。)

化学物質のリスクアセスメントの実施

 リスクアセスメントは、職場の潜在的な危険性又は有害性を見つけ出し、これを除去、低減するための手法です。平成 18 年 4 月 1 日以降、リスクアセスメントの実施が労働安全衛生法第28 条の 2 により努力義務化されました。

毒物及び劇物取締法(毒劇法)

毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする法律

🔔毒物
テトラメチルアンモニウム=ヒドロキシド(TMAH)など
🔔劇物
メタノール(メチルアルコール)、トルエン(トロール、メチルベンゼン)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、キシレン(キシロール)、塩化水素(塩酸)、硫酸、ぎ酸、シュウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミンなど

消防法

火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする法律。
実装ラインで使用される洗浄剤は主に「第4類音化性液体」の分類です。

第4類引火性液体

🔔第1石油類(引火点21℃未満)
トルエン(トロール、メチルベンゼン)、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、ノルマルヘキサンなど
🔔アルコール類(構成分子の炭素原子数が1個~3個の飽和一価アルコール)
メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)、イソプロピルアルコール(IPA、イソプロパノール)など
🔔第2石油類(引火点21℃以上70℃未満)
キシレン(キシロール)、酢酸ブチル、灯油・ターペン(ソルベントナフサ)など
🔔第3石油類(引火点が70℃以上200℃未満)
エチレングリコール、ターペン(ソルベントナフサ)、酢酸ブチルカルビトール、酢酸カルビトールなど

PRTR法

環境への排出量等の把握に関する措置(PRTR制度)並びに化学物質の性状及び取扱いに関する情報の提供に関する措置(SDS制度)を柱として、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止する法律

🔔第1種指定化学物質
トルエン(トロール、メチルベンゼン)、キシレン(キシロール)、ベンゼン、1,2-ジクロロエタン、シス-1,2-ジクロロエチレン、HCFC-141b、HCFC-225、ジクロロメタン(塩化メチレン、メチレンクロライド)、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、1-ブロモプロパン、2-ブロモプロパン、ノルマル-ヘキサン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼンなど

オゾン層保護法(特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律)

国際的に協力してオゾン層の保護を図るため、オゾン層の保護のためのウィーン条約及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の的確かつ円滑な実施を確保するための特定物質等の製造の規制並びに排出の抑制及び使用の合理化に関する措置等を講じ、もつて人の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする法律。

🔔特定物質等 (附属書A,B,C,E及びF)
1,1,1-トリクロロエタン、HCFC-141b、HCFC-225(附属書Fに示された物質は2019.1.1より該当)など

大気汚染防止法

工場及び事業場における事業活動並びに建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、並びに自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする法律

揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制制度

揮発性有機化合物(VOC)は、「大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質を除く)」と定められています。

工場・事業場に設置される施設で、VOCの排出量が多いためにその規制を行うことが特に必要なものを 揮発性有機化合物排出施設(VOC排出施設)と言い、下記のような事業所が該当します。
・化学品製品製造用乾燥施設 ・吹付塗装施設 ・塗装乾燥施設 ・合成樹脂積層の接着乾燥施設 ・接着乾燥施設 ・印刷乾燥施設 ・工業用品洗浄/乾燥施設 ・揮発性有機化合物の貯蔵タンク

水質汚濁防止法

工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進すること等によって、公共用水域及び地下水の水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ。)の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする法律

🔔有害物質の一例
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンなど

土壌汚染対策法

土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする法。

🔔第1種特定有害物質(揮発性有機化合物)
1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレンなど

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)

人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止することを目的とする法律

🔔第二種特定化学物質
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど
🔔優先評価化学物質
n-ヘキサン、1,2-ジクロロエタン、トルエン(トロール、メチルベンゼン)、キシレン(キシロール)、メタノール(メチルアルコール)、イソプロピルアルコール(IPA)、1-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ぎ酸、2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ、ブチセロ)、1-ブロモプロパン、N-メチル-2-ピロリドンなど

廃棄物処理法

廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする法律

洗浄剤使用現場における環境・安全を怠ると企業の存在を左右すると言っても過言ではありません。各種法令対応、安全対応に関しての代替相談は是非弊社にご一報頂ければ幸いです。

※文中の法令に関しては2022年3月現在の記載で、法令は改正されることがあります。

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