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実装工程のはんだ付け(半田付け)でよく耳にするフラックスとは、はんだ付けの補助剤であり、はんだ付けを可能にする役割を担うものです。
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基板実装コラム
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今回は同じフラックスでも、はんだ付け後に残るフラックス残渣(ざんさ)とは何か、そしてフラックス残渣によるトラブルとその対策ついて解説します。
フラックスを構成するロジン・活性剤などの成分は、はんだ付け工程で金属表面の酸化被膜と反応し酸化物を溶解除去することにより、はんだ付けが可能になります。しかし、はんだ付けと同時に”フラックス残渣”(反応後の燃えカス)が生成されます。
フラックス残渣とは、はんだ付け後のフラックスの燃えカスのようなものでロジン、未反応の活性剤、チクソ剤、金属塩(Sn塩等)が含まれており、フラックス洗浄工程によりプリント基板から除去する必要があります。
このフラックス残渣を放置すると、フラックス残渣中の活性剤やロジンが金属を腐食させたり、酸化被膜とフラックスの反応物質が空気中の水分を吸湿したりしてトラブルを引き起こす危険性があります。ほかにも、フラックス残渣が存在することによって発生する物理的なトラブルもあります。
フラックス残渣に含まれる金属塩などのイオン性の物質は湿度の高い環境下で電解質溶液となり実装部品のリード間にイオンマイグレーションによる金属を析出させて回路ショートを引き起こす恐れがあります。
フラックス残渣に含まれる金属塩などのイオン性の物質は湿度の高い環境下で導電性を持つため、電圧が加わると腐食が発生する恐れがあります。また、電圧のかからない場合でも、異種金属が接すると局部電池腐食が発生する恐れがあります。
フラックス残渣は乾燥して言う状態では絶縁性が高いため、例えば部品として搭載されているコネクタの接点部分に付着した場合は接続不良を引き起こしてしまいます。
インサーキットテスト(ICT)やファンクションテストにおいてコンタクトピンがフラックス残渣で汚れてしまうと接触不良となり、検査効率や信頼性が低下します。
はんだ付け部分がフラックス残渣に覆われているとキラキラと反射してしまい、はんだ付けの状態(はんだの表面状態や形状など)を目視観察する妨げとなります。
他にも、後工程においてもワイヤボンディングの接続不良や封止樹脂(アンダーフィルなど)の硬化不良・充填不良などといったトラブルを引き起こす恐れがあります。
外観上の変色から、製品の機能を破壊してしまうトラブルまで様々なものがありますが、こういったトラブルを引き起こす恐れのあるフラックス残渣が残ったままで製品を出荷すると、大きな市場トラブルにつながる危険性があります!
フラックス残渣が引き起こすトラブルの解決や予防には洗浄(フラックス洗浄や基板洗浄と呼ばれます)が極めて有効です。
例えば、車載モジュールや宇宙関連機器など高い信頼性が要求される分野では上述のようなトラブルを避けるためフラックス残渣の洗浄工程は欠かせません。それ以外にも最近では、ITなど高密度実装化が加速する分野において、わずかなフラックス残渣でも その中に残存する樹脂等による誘電損失(回路特性への悪影響)を引き起こす懸念があり、フラックス洗浄が求められています。
一方で、近年では低残渣タイプや無洗浄タイプのフラックスを使用し、フラックス洗浄の工程を省略して無洗浄とするケースが増えています。
ところが、低残渣タイプや無洗浄タイプのフラックスを選定したにも関わらず、客先からの要求によってフラックス洗浄工程を導入検討するお客様もいらっしゃいます。こういった低残渣タイプや無洗浄タイプのフラックスには、吸湿しにくくしたり、発生したフラックス残渣をコーティングするような添加剤が配合されているものもあり、フラックス洗浄が困難になる事例もあるため注意が必要です。
ではここから、具体的なフラックス洗浄の方法をご説明いたします。
その内容は"フラックス洗浄とは"に続きます!
困ったときの解説ページ
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標準 マイクロソルダリング技術 第3版
社団法人 日本溶接協会 マイクロソルダリング教育委員会[編]
日刊工業新聞社
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