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エレクトロニクス実装のリフロー工程では、はんだをプリント基板に供給しその上に電子部品を搭載し、リフロー炉で加熱溶融して接合しています。はんだの供給方法としては、メタルマスクやディスペンサーを用いてはんだペースト(ソルダペースト)を供給する方法、プリコート(めっき)で供給する方法、はんだボール(ソルダボール)で供給する、などの方法がありますが、メタルマスクを用いてはんだペーストを印刷する供給方法が最も多く用いられています。
このページでは、メタルマスクについての解説、印刷プロセス、起こりうるトラブルと洗浄について紹介します。
生産現場で使われるマスク(版)には、大きく分けて2種類あります。
メッシュスクリーンマスク (メッシュ版、スクリーン版) | 合成繊維や金属繊維で織ったベースに乳剤で開口を形成したマスク |
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メタルマスク (ステンシル) | 開口部を形成した金属板などを枠に張り付けたマスク |
メッシュスクリーンマスク
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メタルマスク |
メタルマスクの素材としては、ステンレス(SUS)、ニッケル、リン青銅、銅などが良く使われています。
実装工程では、左の写真のような印刷機を用いて はんだペーストの印刷が行われる場合が多いです。 |
メタルマスクの下にプリント基板をセットします。 | |
スキージを下方に押し付け(加圧し)ながら移動し メタルマスクの開口部からはんだペーストを所定の箇所に塗付します。 | |
セットしていたプリント基板を離します。 プリント基板に開口部と同じ形状のはんだペーストが印刷されました。 |
実装工程においては、はんだペーストをいかに欠けや過多なく、安定して印刷できるか重要です。
ここでは印刷不良として挙げられる事象の一例を紹介します。
メタルマスクに必要な項目の1つに、開口壁面が平滑ではんだペーストが付着しにくく連続印刷性に優れている事が挙げられます。 ところが、ファインパターン化に伴いメタルマスクの開口部が小さくなると、印刷したはんだペーストがプリント基板の方に移らず、右画像のように開口部に残ってしまうことがあります。画像内の薄く色づけした部分が開口部に残ってしまったはんだペーストです。このまま印刷を繰り返すと、開口部が一部欠けた状態ではんだペーストを印刷する事になり、はんだ供給量が減るため「かすれ」という問題が発生します。 |
マスクとプリント基板の電極部分の間に隙間が有ったり、スキージへの加圧が強すぎたりすると、開口部の外周部分にはんだペーストがにじみだしてしまいます。そのにじみ部分がプリント基板にも転写されてしまう「にじみ」という問題が発生します。にじみはブリッジ(ショート)の発生など、はんだ付け不良を招く原因となります。
そこで重要になるのが定期的なメタルマスク洗浄です。
上記のような問題の発生を防ぐため、メタルマスクは定期的に洗浄する必要があります。
メタルマスク洗浄に使用する洗浄剤を選定する際に着目すべき項目は多岐にわたります。ここからはメタルマスク洗浄剤を選定する際のポイントをご紹介します。
メタルマスクの洗浄は、IPA(イソプロピルアルコール)を用いて、ブラシやウエス等により手拭きで洗浄を行なっている現場も多くあります。
しかし、マスク開口部の微細狭小化にともない、IPAのように溶解力の低い洗浄剤でははんだペーストが開口部に残留してしまいます。そのため、はんだペーストに対する溶解力が高い洗浄剤(グリコールエーテル系洗浄剤など)を使用する必要があります。
メタルマスクは、開口部を形成したメタル版をアルミなどの金属フレームにコンビネーションを介してテープで張り合わせ固定した構造をしています。はんだペーストに対する溶解性を確保しつつ、コンビネーションや金属フレーム、固定テープへの影響が少ない洗浄剤の選定が必要です。
例えば、固定テープに洗浄剤が浸透して接着強度が低下すると、メタルマスクのテンションが低下してしまい、印刷不良や版剥がれといったトラブルを引き起こす恐れがあります。
部材への影響と同じくらい、環境や人体への影響も考慮する必要があります。VOC(揮発性有機化合物)の量が少ないもの、オゾン層の破壊や海洋汚染を引き起こさないもの、作業者にとっては、皮膚への刺激や臭気の少ないものなどを選定する必要があります。
安衛法有機則や、PRTR制度、消防法などの法令に該当する洗浄剤を使用する場合は、各種届出や管理が必要となります。
例えば、実装工程で頻繁に使用されるIPAですが、安衛法有機則に該当するため局所排気装置の設置が必要となり、洗浄以外でのコスト負担が大きくなってしまいます。また、引火点が11℃であり常温でも引火する危険性があるため、貯蔵・取扱う際には、静電気帯電防止措置を講じた作業服・作業靴を着用する、超音波洗浄機などの洗浄設備に入れて使用する場合は防爆仕様の設備構造とする、と言った安全性に対する措置・コスト負担が必要となります。洗浄剤の選定時には各種法令への該当状況を確認し、作業者の作業環境への配慮からも、より安全性の高い洗浄剤の選定が必要です。
製品紹介
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製品紹介
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標準 マイクロソルダリング技術 第3版
社団法人 日本溶接協会 マイクロソルダリング教育委員会[編]
日刊工業新聞社
技術資料
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