IPA(イソプロピルアルコール)の貯蔵・取り扱い方法

最終更新日:
公開日:

はじめに

実装工程の様々な洗浄や日常の掃除・清掃で頻繁に使用されるIPA(イソプロピルアルコール・イソプロパノールとも呼ばれます。)ですが、貯蔵や取扱いについてはさまざまな法令やガイドラインで細かく規定されています。

このページでは、IPAを貯蔵・取り扱う場合に主なネックとなる、法令、引火点、VOC、洗浄性の観点から解説いたします。
御社のIPAの使い方、間違っていませんか?

法令

IPA消防法(第4類アルコール類)と労働安全衛生法有機溶剤中毒予防規則(有機則)に該当します。

消防法 IPAは第4類アルコール類に該当します。
指定数量(400L)以上を貯蔵または取り扱う場合は消防法の規制を受けます。
指定数量未満の場合でも各市町村の火災予防条例で貯蔵または取り扱いの規制を受けます。
特に、指定数量の1/5(IPAの場合80L)以上を貯蔵または取り扱う場合、市町村条例により
消防長または消防署長に届出書類の提出が必要です。
有機則 IPAは「第2種有機溶剤」に該当します。
*アセトン、キシレン、酢酸エチル、メタノール、ジクロロメタンなどが同じ第2種有機溶剤に該当します。
有機溶剤に該当するため、IPAを使用する事業所には
*作業主任者の選任
*定期自主検査の実施
*点検・補修の実施、記録の保管
*送気マスク又は有機ガス用防毒マスクの使用
*作業環境の測定
*局所排気設備等の設置
*年1回の特殊健康診断の実施  などが義務付けられます。

 それぞれの義務や規制に対応するために、手間やコストがかかってしまいます。

有害性

IPAは皮膚への刺激性や目に対する重度の刺激性(皮膚にかかったり目に入ったりするとピリピリ・ヒリヒリするなど)があります。
液体が皮膚に触れたり目に入ったりした場合だけでなく、飲み込んでしまったり蒸気を吸入してしまったりすることによる急性毒性*や慢性毒性*として呼吸器や内臓に病理学的な影響を及ぼす恐れがあります。

取り扱いの際には、有機ガス用防毒マスク、耐溶剤性手袋、保護メガネ、有機溶剤が浸透しにくい保護衣(前掛けや長靴)等の着用が必要です。

*急性毒性:1回の投与・暴露または短期間の複数回投与によって24時間~2週間程度で生じる毒性のこと
*慢性毒性:3か月(望ましくは6ヶ月)以上という長期間の連続または反復投与・暴露によって生じる毒性のこと

引火性

IPAの引火点は12℃と非常に低く、常温でも静電気などによって引火し、火災が発生する危険があります。

IPAを貯蔵・取扱う際には、
・静電気帯電防止措置を講じた作業服・作業靴を着用する、
・容器等へ入れる場合は必ず接地を行う、
・周囲では溶接や研磨など火花の出る作業を行わない、
超音波洗浄機などの洗浄設備に入れて使用する場合、防爆仕様の設備構造とする、
と言った安全性に対する措置が必要です。

これも手間・コストがかかりますが、ここを疎かにすると工場火災につながる恐れがあります。

VOC ~揮発性有機化合物~

VOCは塗料溶剤、接着剤、インキ、一部の洗浄剤等に含まれる、揮発性の有機化合物です。

光化学スモッグの原因物質の1つであり、ヒトの呼吸器や植物に影響を与えます。
IPAはVOCに該当し、大気汚染防止法の規制により排出量の届け出や排出濃度基準の順守、排出削減などが求められる場合があります。
中小事業所などでは規制の対象外ですが業界団体を主体に自主的取り組みが求められています。
たとえば、電機・電子業界団体*のVOC排出規制の自主行動計画では排出抑制対象20物質が規定され、IPAが筆頭に挙がっています。
*電機・電子業界団体:一般社団法人日本電機工業会(JEMA)、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)

VOCを削減することで、
☺溶剤の臭いが少なくなり作業環境を改善できる、
☺従業員の健康保持に貢献できる、
☺環境対策に積極的な企業であることをアピールできる、
などのメリットがあります。

洗浄性

汚れたワークをIPAに浸漬して、ゴシゴシ擦って洗浄していませんか?

実装ラインで発生する汚れに対するIPAの洗浄性は、決して高いものではありません。
そのため、汚れたワークをIPAに浸漬しているだけでは なかなか洗浄しきれません。
洗浄装置に入れて洗浄する*、もしくはブラシで擦るなど時間や人員・手間をかけて洗浄している例が多くあります。
こういった洗浄作業にかかる時間や人手にもコストがかかっています。
*洗浄装置にIPAを投入して使用する場合、引火する危険性への対策が必要です。

高洗浄力の洗浄剤に置き換えることで洗浄時間の短縮や洗浄工数の削減を見込めます!

IPA代替、有機溶剤代替洗浄剤のご提案

製品紹介
化研テックの工業用アルコール
化研テックでは、実装工程の様々な洗浄用に、IPAに代わる洗浄剤を開発しております。
フラックス、はんだペースト、3Dプリンターで使用するアクリル系樹脂などの洗浄に使用するIPAを代替したい!というお声をたくさんいただいています。
製品情報
有機溶剤の代替製品
有機溶剤は、インキや塗料・ペースト等の希釈溶剤や各工程での洗浄溶剤として幅広く使用されています。また、労働安全衛生法 有機溶剤中毒予防規則(有機則)の対象となる溶剤のことを有機溶剤と呼ぶ例もあります。このページでは、有機則の対象となる有機溶剤及び有機溶剤含有物を「有機溶剤」と称し、用途・洗浄対象ごとに有機溶剤の代わりとなる製品を紹介しています。

関連記事

困ったときの解説ページ
アルコール、エタノール その違いとは① ~総称としてのアルコール~
「アルコール」には、炭化水素の水素をヒドロキシ基(-OH)で置換した構造の化合物の総称という性質があります。ヒドロキシ基(-OH)による分類や、アルコールの性質について解説しています。
困ったときの解説ページ
アルコール、エタノール その違いとは② ~アルコールとはエタノールのこと~
一般的に言われるアルコールですが、エチルアルコール(エタノール)を指す場合もあります。エタノールの種類や規制について解説しています。
困ったときの解説ページ
危険物の指定数量とは
実装工程で使用される洗浄剤の多くが該当する「消防法 第4類 引火性液体」の指定数量を中心に解説します。
困ったときの解説ページ
有機溶剤中毒予防規則で定める有機溶剤とは
IPA等、実装現場で多用される溶剤は有機則の対象となっています。実装工程に係る部分を解説しています。
困ったときの解説ページ
洗浄剤にかかわる法令の遵守
産業洗浄にかかわる各種法令と代表的な該当化学物質を紹介しています。例えば、実装工程で使用されているIPAやアセトンは消防法だけでなく有機則にも該当します。

お問い合わせ

日本国外の方は英語ページでお問い合わせください。

ご不明な点やお問い合わせがございましたら、下記のフォームよりご連絡ください。
SDSやTDS、取扱説明書をご希望の方は製品資料の送付依頼はこちらからご連絡ください。
営業担当者にて確認の上、ご連絡いたします。

製品資料の送付依頼はこちら

‼ お問い合わせフォームからのセールス等は固くお断りいたします。送信いただいても対応いたしかねます。 ‼

一覧に戻る

                   

製品に関するお問い合わせ

ページの先頭へ

問い合わせへ