部品実装プロセス
エレクトロニクス業界における実装(部品実装)とは、半導体素子やICチップなどの電子部品をプリント基板などにはんだ付けし、端子や配線を電気的に接続して動作可能な状態にすることを言います。プリント回路基板に求められる性能に応じて、どのプリント基板にどのような電子部品をどのような方法で実装するのかといった検討を行い、その形態に合った実装プロセスを選定しなければなりません。
部品実装プロセスは、大きく表面実装プロセスと挿入実装プロセスに分けられ、それぞれで使用されるはんだ付け方式が異なります。
表面実装はSMT(Serface Mount Technologyの略)とも呼ばれ、下図で示すようにプリント基板の表面に配置された接続電極(ランド)上に電子部品の電極やリードを搭載してはんだ付けする方法を言います。はんだ付けはリフローはんだ付け方式が用いられます。 |
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挿入実装は下図で示すようにリードと呼ばれる配線の付いた部品をプリント基板のスルーホールに挿入し、部品のリードとスルーホール周辺の電極(ランド)をはんだ付けします。はんだ付けはフローはんだ付け方式が用いられます。 |
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表面実装と挿入実装のメリット・デメリット
表面実装プロセスと挿入実装プロセスにはそれぞれ下記のような特徴があります。
表面実装
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メリット | 🙂 小型の電子部品の搭載や回路の微細化が可能になり実装密度が上がる。
🙂 自動化・部品の小型化によりコストが下がる。 |
デメリット | 🙁 微細化に伴い、人手による修正が困難になる。
🙁 接合部分が微細なため、接合強度が低い。
🙁 リフローはんだ付け工程では炉内で全体が加熱されるため、プリント基板・部品全般に熱ストレスがかかる。 |
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挿入実装
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メリット | 🙂 部品挿入時にリード先端を折り曲げるので接続強度が高い。
🙂 フローはんだ付け工程ではリード部分だけが加熱されるので部品への熱影響が少ない。 |
デメリット | 🙁 大型コンデンサやコネクタなどの異形部品は人手による挿入が必要である。
🙁 大型部品が多く、表面実装と比べると実装密度が低い。 |
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はんだ付け方式の違い
電子部品をプリント基板に実装する際、はんだ付けという工法が用いられます。はんだ付けの方式は大きく、「リフローはんだ付け」「フローはんだ付け」「マニュアルはんだ付け」の3方式に分けられます。
最近の実装は、上図の方式を組み合わせて行われています。
例えば、耐熱性のない部品や熱容量が大きくてリフロー工程を通せない部品をはんだ付けする際には、部品ごとに局所はんだ付けやマニュアルはんだ付けが行われています。
なお、どの方式ではんだ付けを実施しても、プリント基板の信頼性を向上させるために はんだ付け後のフラックス洗浄(プリント基板洗浄)が効果的です。化研テックはプリント基板上に発生するフラックス残渣を除去する洗浄剤・洗浄装置を開発しております。はんだ付け方式に応じた洗浄方法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
ではここからは、リフローはんだ付け、フローはんだ付けの違いや、各方式の工程について詳しく解説いたします。
表面実装のはんだ付け(リフロー)
リフローはんだ付けによる表面実装プロセスを示します。
はんだペースト印刷
| プリコート(めっき)やはんだボールによる供給もありますが、一般的にはメタルマスクを用いてはんだペーストをプリント基板上に印刷する工法が多く用いられています。
「実装工程の製品不良の約70%は、最初に行うはんだペーストの印刷工程に原因がある」と言われるくらい、印刷工程は実装品質を影響する重要な工程です。そのため、印刷後にはんだペーストの塗付量や印刷位置を検査する工程を追加する場合もあります。
印刷精度の維持や向上には、印刷に使用するメタルマスクの洗浄も重要です。 |
部品実装
| マウンターと呼ばれる設備を用います。マウンター内のノズルがテープリールやトレイ上の電子部品を吸着し、プリント基板上の適切な位置に搭載していきます。 |
リフローはんだ付け
| リフローはんだ付け工程では、リフロー炉というオーブンのような装置を使用します。
リフロー炉は予備加熱、本加熱、冷却の3ゾーンが一体化したトンネル状の構造をしており、プリント基板がコンベアに乗ってリフロー炉を通過する間に、はんだペーストの溶融に必要な熱を供給してはんだ付けを行います。 |
温度プロファイルの一例
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- 予備加熱ゾーン
- はんだペーストに含まれる溶剤を揮発させながら温度を上昇させ、フラックスが活性化しやすい一定の温度で維持する段階。
- 本加熱ゾーン
- プリント基板と実装部品を均一に温度上昇させながらはんだが溶融する温度まで上昇する段階。
- 冷却ゾーン
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はんだ付けの際には、すべてのはんだ付け箇所をはんだペーストの融点以上に、かつ実装する電子部品やプリント基板の耐熱温度以下に加熱しなければなりません。リフロー炉ではんだ付けをする場合は、はんだペーストの種類や実装部品等に応じてリフロー炉内が適切な温度になるように設定した「温度プロファイル」に応じて管理しています。
例えば、温度の上昇が早すぎると はんだペーストに含まれる溶剤成分が突沸し、ボイド(空隙)やはんだボールが発生する恐れがあります。逆に、リフロー炉内の温度が同じでも、電子部品のサイズや形状によっては接合部分の温度が上がりにくい部品もあり、加熱が不十分だと接合強度が低下してしまう(剥離する)恐れがあります。そのため、はんだペーストや電子部品の特性を確認した上で、温度プロファイルを設定することが重要になります。
リフロー炉の加熱方法には熱風加熱、赤外線加熱、蒸気加熱などがあり、炉内の温度の均一性を保って過昇温を防ぐために、加熱方法を複数組み合わせたリフロー炉もあります。
リフロー炉の内部には、加熱によりはんだペーストから霧化したフラックス(やに)が堆積してしまうため、定期的な清掃が必要です。